ビッグマック指数で世界を並べたら、日本だけ列を外れた【気候と経済の話】

色分けした世界地図を夫婦で覗き込み、東アジアの一点を指さして驚いている様子 フリー

おはようございます!レバナス父さん(@levanasu_papa)です。

今年の2月、ビッグマックが500円になりました。480円からの値上げ。ワンコインでギリギリ買えるハンバーガー、という位置にたどり着いたわけです。😳

で、この「500円」という数字。世界地図の上に置いてみると、めちゃくちゃ変な数字なんです。

なぜこれを記事にしようと思ったのか、先に書いておきます。

ビッグマック指数という言葉自体は、前から知っていました。ただ「知っている」だけで、投資には関係のない話だと思って、ずっと素通りしてきたんです。ハンバーガーの値段で為替を語る、ちょっと面白い豆知識。その程度の扱いでした。

ところが、この前1ドル163円の記事(1ドル163円、約40年ぶりの円安。そもそも、なんでここまで進んだの?)を書いたときに、ついでのつもりで中身をよくよく見てみたら、話が全然そこで終わらなかった。

ビッグマックの値段は、その国の物価そのものです。物価が分かるということは、その国の経済の強さが見える。経済の強さが見えるということは、通貨の強さにまでつながっていく。ハンバーガー1個から、そこまで地続きなんです。😳

そして54カ国を全部並べてみたら、まったく想像していなかったものまで出てきました。

気候です。🌍

豆知識だと思って素通りしていたものが、物価・経済・通貨・気候まで全部つながっていた。これは記事として面白いぞ、と思い立った次第です。

というわけで今日は、いつもの家計の話も、レバナスの話も一切しません。ビッグマック1個を手がかりに、世界の物価と、国の豊かさと、気候の話をします。高校の地理でやった「西岸海洋性気候」とか「サバナ気候」とか、あれが本当に出てきます。

投資の役に立つかは分かりません。でも、僕が調べていていちばん「うわ、そうなんだ」と声が出たテーマです。

そもそもビッグマック指数って何なんですか

イギリスの経済誌『エコノミスト』が1986年9月から発表している指標です。今年の9月でちょうど40周年。🎂

考え方はびっくりするほど単純です。

🍔 ビッグマック指数の考え方

  • ビッグマックは世界中どこでもほぼ同じ物が売られている
  • 牛肉、パン、レタス、店の家賃、店員さんの給料、電気代——その国のコストが全部つまっている
  • 同じ物なら、本来はどの国でも同じ値段になるはず
  • ならないなら、その差が「為替のズレ」ということにしよう

実際にやってみます。2026年7月時点で、

  • 日本のビッグマック=500円
  • アメリカのビッグマック=6.22ドル

同じ物なんだから、500円と6.22ドルは同じ価値のはず。ということは、

500円 ÷ 6.22ドル = 1ドル80.39円

これが「ビッグマックから計算した、あるべき為替レート」です。1ドル80円。

でも現実のレートは1ドル162円。倍です。😱

つまりビッグマック的に言えば、円は本来の半分の値打ちしかつけてもらえていない。円は50.4%も安く見られている——これが「日本のビッグマック指数はマイナス50.4%」の意味です。

📖 用語ひとつだけ

この「同じ物は同じ値段になるはず」という考え方を購買力平価(こうばいりょくへいか)といいます。難しそうな名前ですが、中身は「ハンバーガーが2倍の値段なら、通貨も2倍の差があるはずでしょ」というだけの話です。

1986年に発表された当初は、半分ジョークのつもりだったそうです。

ところが計算してみると、実際の為替とそこそこ合ってしまった。それで真面目に参照される指標になってしまいます。エコノミスト誌自身が「あくまで遊びです」と毎回ことわりを入れているのに、40年たっても引用され続けています。😅

主要国のビッグマック、ここまで違います

では本題。2026年7月版・全54カ国のデータから、主な国を抜き出してみます。

ビッグマック1個の値段を国別に比較した横棒グラフ。スイスが9.04ドルで1位、日本は3.08ドルで54カ国中48位、台湾が2.42ドルで53位
同じビッグマックのはずなのに、いちばん高い国といちばん安い国で4倍近い差があります

数字で並べるとこうです。

順位 現地価格 ドル換算
1位 スイス 7.30フラン $9.04
3位 ノルウェー 78クローネ $8.05
6位 イギリス 5.49ポンド $7.40
8位 ユーロ圏 6.19ユーロ $7.08
13位 アメリカ 6.22ドル $6.22
18位 シンガポール 7.45Sドル $5.77
40位 中国 26.5元 $3.91
42位 韓国 5,700ウォン $3.84
47位 香港 25.5香港ドル $3.25
48位 日本 500円 $3.08
53位 台湾 78台湾ドル $2.42
54位 インドネシア 43,000ルピア $2.38
The Economist「Big Mac index」2026年7月版より(全54カ国)

スイスのビッグマックは9.04ドル。日本円にすると約1,470円です。🇨🇭

ハンバーガー1個に1,470円。しかもセットじゃなくて単品。ポテトもコーラもつきません。スイス旅行で家族4人がマックに入ったら、それだけで6,000円コースということになります。

いっぽう日本は500円=3.08ドルで、54カ国中48位。「500円は高い」と国内では言われていますが、世界基準ではかなり安い部類です。

ちなみにいちばん安いのはインドネシアの2.38ドル。日本との差は、たった0.7ドルしかありません。😑

ここからが本題。気候帯で並べると、地図が見えてくる

さて。ここまでは他の解説記事にもよくある話です。

僕がやってみたかったのは、この先。この国々を「気候帯」で並べ替えたらどう見えるのか。🗺️

なぜ気候かというと、高校の地理でこう習ったからです。「西岸海洋性気候の地域は早くから工業が発達した」「熱帯は開発が遅れた」。あれは本当なのか、ビッグマックで検算してみたくなったんです。

各気候帯の教科書的な代表国を1つずつ選んで、ビッグマックの値段と、1人当たりGDP(=国民1人あたりの豊かさ)を並べてみました。

ここでアメリカも必ず入れておきます。マクドナルドはアメリカの会社ですから、本家の値段が分からないと比較になりません。

そしてアメリカを入れると、この記事でいちばん厄介な事実が出てきます。

ニューヨークと東京は、同じ「温暖湿潤気候」なんです。四季があって、夏は蒸し暑くて、一年中それなりに雨が降る。地理の教科書でも、日本とアメリカ東部は同じ区分に入っています。

気候帯ごとの代表国のビッグマック価格と1人当たりGDPを並べた棒グラフ。同じ温暖湿潤気候のアメリカが6.22ドルなのに対し日本は3.08ドルと約2倍の差がある
濃い棒がビッグマック、薄い棒が1人当たりGDP。色を塗った2本が、同じ温暖湿潤気候です

まず、地理の教科書は当たっています

気候帯ごとに見ていきます。

気候帯 代表国 ビッグマック 1人当たりGDP
西岸海洋性気候 イギリス(ロンドン) $7.40 4.9万ドル
温暖湿潤気候 アメリカ(ニューヨーク) $6.22 9.0万ドル
亜寒帯湿潤気候 カナダ(モントリオール) $5.81 5.9万ドル
地中海性気候 チリ(サンティアゴ) $5.41 2.1万ドル
サバナ気候 タイ(バンコク) $4.02 1.2万ドル
温暖湿潤気候 日本(東京) $3.08 6.7万ドル
砂漠気候 エジプト(カイロ) $2.87 0.7万ドル
熱帯雨林気候 インドネシア(ジャカルタ) $2.38 1.2万ドル
気候帯の代表国は高校地理の定番都市から。※イタリア等はエコノミスト誌が「ユーロ圏」で一括集計しており単独データがありません

日本を除いて上から見ていくと、きれいに階段になっているのが分かると思います。

西岸海洋性気候——ヨーロッパの大西洋側です。夏は涼しく冬も暖かい。偏西風と暖流のおかげで一年中ほどよく雨が降り、農業がやりやすい。産業革命が起きたのもここでした。ビッグマックは7.40ドルで堂々の高値圏です。

そして本家アメリカが6.22ドル。ニューヨークで1個買うと、日本円で約1,010円。日本の2倍です。1人当たりGDPも9.0万ドルと、この8カ国でいちばん高い。豊かな国のハンバーガーは、ちゃんと高い。ここまでは筋が通っています。

亜寒帯湿潤気候——カナダや北欧。冬は厳しいですが、広大な森林と鉱物資源があり、人口密度が低いぶん1人当たりの取り分が大きい。5.81ドル。

地中海性気候——夏に乾き、冬に雨が降る独特の気候。オリーブとぶどうの土地です。チリで5.41ドル。

そして熱帯雨林気候・砂漠気候が最下位グループ。インドネシア2.38ドル、エジプト2.87ドル。1人当たりGDPもそれぞれ1.2万ドル、0.7万ドルと低い水準です。

🌴 なぜ暑い国ほど不利だと言われるのか

地理や開発経済学でよく挙げられる理由はこのあたりです。

  • 感染症が多い——マラリアなど熱帯特有の病気が労働力を削る
  • 土壌が痩せやすい——雨が多すぎて栄養分が流れてしまう(ラテライト)
  • 食料を貯蔵しにくい——高温多湿で腐りやすく、備蓄が積み上がらない
  • 植民地にされた歴史——資源を運び出すための仕組みだけが残された

でも、日本のところで階段が壊れます

問題はここからです。表をもう一度見てください。

日本の1人当たりGDPは6.7万ドル。イギリスより上、カナダより上、チリの3倍、タイの5倍以上です。この8カ国の中でも上から2番目。

なのにビッグマックは3.08ドルで、下から3番目。サバナ気候のタイ(4.02ドル)より安いんです。

1人当たりGDPで5倍以上の差があるタイに、ハンバーガーの値段で負けている。これが冒頭で「変な数字」と言った意味です。😳

そして極めつけが、同じ温暖湿潤気候のアメリカとの差です。

アメリカ(ニューヨーク) 日本(東京)
気候区分 温暖湿潤気候 温暖湿潤気候
ビッグマック $6.22(約1,010円) $3.08(500円)
1人当たりGDP 9.0万ドル 6.7万ドル
世界順位 13位 / 54 48位 / 54
気候はまったく同じ。豊かさの差は1.3倍。なのにハンバーガーの値段は2倍ちがう

気候が同じ。国の豊かさは1.3倍しか違わない。なのにハンバーガーの値段は2倍ひらいています。

ここまで来ると、もう気候のせいにはできません。気候では説明できない何かが、日本には効いている。

日本だけじゃない。東アジアが3カ国そろって沈んでいる

これ、日本だけの現象なのか。54カ国全部を、豊かさ(横軸)× ビッグマック価格(縦軸)でプロットしてみました。

1人当たりGDPを横軸、ビッグマック価格を縦軸にとった散布図。日本・台湾・香港の3つだけが豊かなのに価格が安い右下の領域に位置している
右に行くほど豊かな国。普通は右上がりになるはずなのに、右下にぽつんと3つ落ちています

右下に沈んでいる3つを見てください。

1人当たりGDP ビッグマック順位
香港 10.8万ドル(世界最上位クラス) 47位 / 54
台湾 9.8万ドル(同上) 53位 / 54
日本 6.7万ドル 48位 / 54
豊かさは世界トップクラス。なのにハンバーガーは世界最安値クラス

台湾は1人当たりGDPが9.8万ドルもあるのに、ビッグマックは54カ国中53位。ブービーです。最下位のインドネシアとほぼ同じ値段。

そして落ちている3つが、全部そろって東アジアの温暖湿潤気候。偶然にしては、あまりに固まりすぎています。

逆パターンもあります

散布図の左上、つまり「そんなに豊かじゃないのにビッグマックが高い」ゾーンも面白いです。

  • ウルグアイ——1.7万ドルなのに8.94ドルで世界2位
  • コロンビア——0.8万ドルなのに8.00ドルで世界4位
  • コスタリカ——1.9万ドルで7.00ドル(10位)

コロンビアの1人当たりGDPは日本の8分の1です。その国のビッグマックが、日本の2.6倍。

これらの国では、マクドナルドは庶民のファストフードではありません。ちょっといいレストラン扱いで、都市部の中間層以上が行く店です。同じ看板でも、社会の中での立ち位置がまるで違う。🍔

ここがビッグマック指数の限界でもあります。「同じ物」に見えて、実は同じ物ではないんです。

白状します。あの階段、僕が作りました

ここまで気候で並べてきて、我ながらいい感じの階段ができたなと思っていたんですが、ひとつ白状しないといけないことがあります。😇

さっきの表、代表国を選んだのは僕です。

そこで、同じ気候帯を別の国で代表させたらどうなるかやってみました。どれも高校の地理で出てくる、まっとうな代表都市です。

気候帯 裏メンバー ビッグマック
地中海性気候 イスラエル(テルアビブ) $7.67
亜寒帯湿潤気候 スウェーデン(ストックホルム) $7.16
温暖湿潤気候 アメリカ(ニューヨーク) $6.22
熱帯雨林気候 シンガポール $5.77
砂漠気候 UAE(ドバイ) $5.17
西岸海洋性気候 ニュージーランド(オークランド) $5.14
サバナ気候 ブラジル(ブラジリア) $4.71
温暖湿潤気候 日本(東京) $3.08
アメリカと日本だけ据え置いて、他を全部差し替えた「裏メンバー」版

………。

階段、跡形もなく消えました。😂

さっきトップだった西岸海洋性気候が、下から2番目に転落。さっき最下位だった熱帯雨林気候が4位に浮上。「暑い国は不利」と言ったそばから、砂漠のドバイが涼しいオークランドを抜いています。

つまり、こういうことです。

⚠️ 正直な注意書き

さっきのきれいな階段は、データが勝手に作ったものではありません。僕がどの国を代表に選んだかが、かなりの部分を作っています。気候は傾向を作りますが、順番までは決めていません。

ここは記事の弱点なので、隠さずに書いておきます。「気候で経済が決まる」みたいな話は、選ぶ国しだいでいくらでも作れてしまう。気持ちよく納得できる図ほど、疑ったほうがいいというのは、たぶん投資でも同じです。😅

ただし——ここからが面白いところなんですが、裏メンバーで並べ直しても、日本だけは変わらず最下位のままです。

代表を入れ替えても、気候の順番をぐちゃぐちゃにしても、日本の位置だけは動かない。この記事でいちばん頑丈な事実は、階段のほうではなく「日本が下にいる」ことのほうでした。

気候だけでは説明しきれない、という話

ということで、気候の話をもう少し正直に詰めます。気候で全部は説明できません。

同じ熱帯雨林気候でも、シンガポールは1人当たりGDP10.8万ドルで世界最上位です。インドネシアと同じ気候、同じ赤道直下、距離も近い。それでも9倍近い差がついています。

この「なぜ差がつくのか」を研究して2024年にノーベル経済学賞を取ったのが、アセモグル・ジョンソン・ロビンソンの3氏でした。彼らの答えはシンプルで、決め手は気候や地形ではなく「制度」だというもの。

🏛️ 彼らが言う「制度」とは

  • 包括的な制度= 財産権が守られ、誰でも参入でき、努力した人が報われる仕組み。長期の成長を生む
  • 収奪的な制度= 一部の権力者が富を吸い上げる仕組み。一時的には成長しても続かない

植民地時代に「移住して住む」形になった土地には前者が、「資源を運び出す」ためだけの土地には後者が残り、その差が数百年たった今も効いている——というのが受賞理由になった研究です。

気候はスタート地点を決めます。でもそこから先を決めるのは制度のほう。だから熱帯でもシンガポールは伸びたし、資源が豊富でも伸び悩む国がある。

だとすると、地理は運命ではなく、ただの初期条件ということになります。本当にそうなのか。この記事の最後で、日本の数字を使って確かめます。

で、なぜ日本と台湾と香港のハンバーガーは安いのか

最後にこの謎です。豊かなのに安い理由。

調べていくと、だいたい3つに整理できました。

①「安い店」で戦う競争があった

日本にはマクドナルドの他に、吉野家もすき家も松屋もコンビニもあります。500円で満腹になる選択肢が山ほどある。その中でマックが900円をつけたら、誰も来ません。

いっぽうスイスは、外食そのものが贅沢な国です。レストランでランチを食べると1人25フラン前後(約5,000円)が相場。人件費が桁違いで、ジュネーブ州の最低賃金は時給24フラン超=日本円で約4,000円(2024年時点)と、世界最高水準です。給仕さんの時給がそのまま料理の値段に乗ります。

その社会でビッグマック7.30フランは、ランチ相場の3分の1以下。ドル換算で9.04ドルと聞くと目が飛び出ますが、現地ではちゃんと「安い店」なんです。

これ、面白い検算ができます。最低賃金1時間ぶんで、ビッグマックが何個買えるか。🍔

最低賃金(時給) ビッグマック 1時間で買える数
スイス(ジュネーブ州) 24.32フラン 7.30フラン 3.3個
日本 1,176円 500円 2.4個
スイスは2024年時点、日本は2026年度の目安額(全国加重平均1,176円)で計算

ドルで比べると2.9倍もあった差が、働いた時間で比べると1.4倍まで縮みます。

「いくら安いか」ではなく「何時間ぶんか」で見る。この物差しは家計でもよく使っていて、レバナスパパが“やらない”と決めた節約3つもまったく同じ考え方で書きました。

つまりスイス人にとってのビッグマックは、日本人にとってのビッグマックと、体感でそこまで変わらない。高いのはハンバーガーではなく、スイスという国全体の値札のほうだったわけです。

② 値上げを許さない空気が長く続いた

日本のビッグマックは2016年に370円、2026年で500円。10年で35%上がりました。

いっぽうアメリカは同じ10年で4.50ドル → 6.22ドル。38%上げています。

日本は「値上げしたら客が離れる」という前提が長く共有されてきました。企業もそれに合わせて価格を据え置き、そのぶん賃金も上がらなかった。安さは、誰かの給料から出ています。

③ そして円が弱い

いちばん効いているのがこれです。500円は500円のまま変わっていなくても、1ドル110円の時代なら4.5ドル、162円なら3.08ドル。店は何もしていないのに、世界から見た値札だけが勝手に下がっていく。

日本のビッグマック指数がマイナス50%まで沈んだ主犯は、ハンバーガーではなく為替のほうです。

この円安がひと月ごとに何をしていたかは、投資ニュースまとめ2026年7月号のほうで追いかけています。

最後に。気候は動かないのに、日本だけ動いていた

さて、ここで最初の問いに戻ります。なぜ日本は、同じ気候のアメリカと2倍もひらいたのか。

ここまで見てきた理由——低価格競争も、値上げを許さない空気も、円安も、ぜんぶ「気候」ではありません。そして、もうひとつ決定的なことがあります。

気候は、この26年でびくとも動いていません。東京は昔から温暖湿潤気候ですし、ニューヨークもそうです。🌏

ということは。もし日本の位置が気候で決まっているなら、日本の順位も26年間、動いていないはずなんです。

調べました。動いていました。しかも、とんでもなく。個人的には今日いちばん堪えたところです。😇

指数そのものは1986年からありますが、エコノミスト誌が誰でも使える形で公開しているデータは2000年4月からです。なのでここからは2000年以降の26年間を振り返ります。それ以前は数字を確認できなかったので、今回は触れません。

2000年、日本はアメリカより高かった

まずは出発点。2000年4月の日本です。

🕰 2000年4月のビッグマック

  • 日本:294円(1ドル106円)= 2.77ドル
  • アメリカ:2.24ドル
  • 日本はアメリカより24%高い/28カ国中5位

読み間違いではありません。26年前の日本は、ビッグマックが世界で5番目に高い国でした。

当時の日本より上にいたのは、イスラエル・スイス・デンマーク・イギリスの4カ国だけ。今スイスの9.04ドルを見て「別世界だな」と思ったのと同じ目で、当時は世界のほうが日本を見ていたわけです。

ただし、ここは正直に書いておきます。2000年の調査対象は28カ国、今は54カ国。26年で母数がほぼ倍になっています。だから「5位→48位」の落差には、あとから参加した国に抜かれたぶんも混ざっています。純粋に転げ落ちただけではありません。

とはいえ、あとで見るようにドル建ての値段そのものがほとんど動いていないので、順位の話を差し引いても結論は変わらないんですが。😅

日本のビッグマック価格と世界順位の推移(2000年〜2026年)。ドル建てではアメリカに逆転され、順位は5位から48位へ下落
2000年は日本のほうが高かった。線が交差したあと、差は開くいっぽう

グラフの上の段、2本の線が2002年に交差しています。ここが分かれ道でした。

そして日本のドル建て価格がいちばん高かったのは、2012年1月の4.16ドル。1ドル76円台の超円高だった時期です。14年前のほうが、今より1ドル以上も高かった。

2000年4月 2012年1月 2026年7月
日本の店頭価格 294円 320円 500円
為替 106円 77円 162円
ドル換算 2.77ドル 4.16ドル 3.08ドル
アメリカ 2.24ドル 3.81ドル 6.22ドル
世界順位 5位/28カ国 13位/43カ国 48位/54カ国
日本のビッグマックが「世界平均より割高」だった最後は、2012年7月です

26年で70%値上げしたのに、世界からは11%しか上がって見えない

ここがこの記事でいちばん気持ち悪いところなんですが、もう一度、店頭価格を見てください。

294円 → 500円。26年で70%の値上げです。日本国内で暮らしている僕らの実感としては、ビッグマックは間違いなく「高くなった」。事実、高くなっています。😅

ところが同じ26年間、ドル建てでは2.77ドル → 3.08ドル。たったの11%しか上がっていない。

いっぽうアメリカは2.24ドル → 6.22ドル。178%です。

2000年と2026年の両方でデータがある27カ国で、ドル建ての値上がり率を並べるとこうなります。

2000年 2026年 上昇率
ポーランド 1.28ドル 6.22ドル +386%
ハンガリー 1.22ドル 5.30ドル +336%
チェコ 1.39ドル 5.43ドル +291%
日本 2.77ドル 3.08ドル +11%(26位)
台湾 2.29ドル 2.42ドル +6%(27位)
2000年4月版と2026年7月版の両方に掲載されている27カ国で比較

ポーランドは2000年の時点で1.28ドル、日本の半分以下でした。それが今や6.22ドルで、アメリカと同額。日本の2倍です。

この26年で世界に置いていかれた度合いが、ハンバーガー1個にきれいに出ています。しかも最下位は台湾。ここでもまた、東アジアが2つ並んで沈んでいる。

これで、最初の問いに答えが出ました。

🌏 今日の結論

気候はこの26年、1ミリも動いていません。動いたのは日本のほうです。5位から48位へ。だから日本が安い理由は、気候ではありません。気候は最初の椅子を決めるだけで、そこからどう動くかは決めていない。

さっき保留にしておいた「地理は運命ではなく初期条件」という話、日本自身がその証拠でした。アメリカと同じ気候なのに2倍ひらいたのも、シンガポールが同じ熱帯でインドネシアの9倍豊かなのも、たぶん全部同じ話です。

気候は変わりません。でも順位は変わりました。下がったということは、上がることもある。それだけの話です。🍔

まとめ:ハンバーガー1個から、ここまで見える

📝 今日のまとめ

  • ビッグマック指数は1986年から続く「同じ物は同じ値段のはず」という遊び。今年で40周年
  • スイス9.04ドル(約1,470円)に対し、日本は3.08ドルで54カ国中48位
  • 気候帯で並べると教科書どおりの階段が出る。ただし代表国を差し替えると階段は消える。気候は傾向を作るが順番は決めない
  • どう並べ替えても日本だけは最下位。本家アメリカと同じ温暖湿潤気候なのに、値段は2倍ちがう
  • 同じ現象が台湾・香港でも。豊かなのに安い3カ国は全部東アジア
  • 気候は初期条件にすぎない。決め手は「制度」——2024年ノーベル経済学賞のテーマでした
  • 日本が安い理由は、激しい低価格競争・値上げを許さない空気・そして円安の3つ
  • ただし最低賃金1時間ぶんで買える数で比べると、スイス3.3個・日本2.4個。差は2.9倍から1.4倍に縮む
  • そして2000年の日本は28カ国中5位だった。アメリカより24%高かった。26年で48位まで落ちた

ビッグマック1個の値段に、気候も、歴史も、植民地の記憶も、為替も、その国の賃金も、全部溶けて入っています。ハンバーガーがこんなに喋るとは思っていませんでした。🍔

「日本は安い国になった」という話は、この数年でさんざん語られてきました。でも僕にとっては、それを嘆く話より、なぜ国ごとにこんな差がつくのかを地図で眺めるほうが、はるかに面白かったです。

ひとつだけ、投資をやっている身として持ち帰ったことがあります。

この記事で僕が作ったきれいな階段は、気持ちよく納得できるぶん、あぶない図でした。代表を選び直したら消えたわけですから。「うまく説明できている図」ほど、誰がどう選んだのかを見たほうがいい。これはたぶん、投資の世界のグラフでもまったく同じです。😅

そして残ったのは、並べ方を変えても動かなかった数字のほうでした。

さて、今度の日曜は子どもたちとマックです。8歳と4歳が食べるのはハッピーセットなので、僕はビッグマックを頼むことになります。

レジで500円を出しながら「これ、スイスなら1,470円なんだよな」と思い出す父さんを、家族はたぶん、いつもどおり無視すると思います。😄

今日はいつもと全然ちがう内容でしたが、たまにはこういう回もアリということで。また次回、よろしくお願いします。🌱

📚 あわせて読みたい

📌 ご注意

本記事は The Economist「Big Mac index」2026年7月版(2026年7月1日時点データ・全54カ国)および同指数の2000年4月版以降の公開データをもとに、筆者が集計・作図したものです。1人当たりGDPも同データセットの数値を使用しています。

記事中の「○位」はエコノミスト誌の公式発表ではなく、同誌が公表するドル換算価格を筆者が高い順に並べ替えたものです。同誌が公式に発表しているのは各国通貨の割高・割安率です。また気候帯の区分は各国の人口・経済の中心となる都市を基準にした筆者の分類であり、公式なものではありません。

特定の国・地域・金融商品を評価または推奨するものではありません🙏

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